冬の川で

写真4 夜明けの雪裡川で採餌を始める
暗い川面から、音もなくゆっくりと「けあらし(川霧)」が立ち、まわりの丘の稜線上がほの白くなるころ、ツルは浅瀬の水のなかで、まだ眠りの中です。
この寒さに、水のなかで・・・と思うかも知れません。が、気温は−30度でも、凍らない川は0度以上ですから、まわりよりずっと暖かです。さらに、地面が凍り、キツネやイヌがどこでも歩ける時期に、安全なのは水のなかです。その上、川の土手は、風よけになるに違いありません。恐らくそうした理由で、ツルは川の中でねぐらをとるのでしょう。
ねぐらでは、毎晩ほぼ決まった場所にいることもあれば、ときには今夜はこちら、明日はあちらと、ねぐらを移します。このねぐら替えの理由は分かりません。が、番いや家族の移動の主導権はオスが持つことが多いので、ねぐら替えもオスの判断かもしれません。
眠っていたツルも、やがて頭を挙げ、羽づくろいを始めたり、岸辺などで餌を探します。ですから、ねぐらは同時に、餌探しの場です(写真4)。ねぐらにするのは、40 cmほどの深さまでで、普通は10〜20 cmの浅瀬です。川、沼、溝など、凍らないところを使いますが、温泉の流れ込む沼も利用しますから、これなどはまさに「鶴の湯温泉」!。
ツルのねぐら離れは、日の出を基準に前後1時間以内が普通ですが、厳寒期は、給餌場へ来るのが、とても遅くなります。特に、風が強く、気温がぐんと下がる日は、給餌場へなかなか現れません。ときには、昼過ぎにやっと出勤してきます。
いつねぐらを離れるかは、オスが決めるのでしょう。しかし、オスの気分だけでそれが決まるとも思えません。メスや子のお腹の空きぐあいで、急かされることもあるでしょう。しかし、家族の状態が、オスの決断にどれほど影響するのかよく分かりません。